名古屋高等裁判所 昭和26年(う)87号 判決
原判決挙示の証拠を精査すると判示事実を認め得るところである各所論は何れも鬼頭巡査が被告人を暴行の現行犯人として逮捕しようとしたのを目して被告人は現行犯人でないから適法なる職務の執行ということが出来ないと主張するけれども鬼頭巡査は所謂男娼の長岡重雄、佐々木雄の両名より朝鮮人より暴行されたと云つて訴えられたので右両名に暴行の事実を確めた上その暴行を受けた右両名よりその暴行を加えた朝鮮人の人相を聞き且同人等が三十米位先へ行く被告人を指したので同巡査これを追い被告人に最初警察署迄任意同行を求めたが被告人之に応じなかつたので被告人を暴行現行犯人として逮捕しようとしたものであることを引用の証拠によつて認め得るから同巡査が当時の状況から見て被告人を真に現行犯と信じて引致しようとしたものであると言はなければならないから適法な職務執行行為であつて、被告人が同巡査に暴行を加へたのに対し原判決が公務執行妨害罪の成立を認めたのは正当である。各論旨何れも理由がない。